30周年記念シリーズ開催報告

Date of Release:2022.1.24
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記念フォーラム2

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30周年記念シンポジウムチラシ 30周年記念シンポジウムチラシ
・日時:2021年12月16日(木)15:00~17:00
 
・方式:オンライン
 
・プログラム:【開会ごあいさつ】
              高橋 陽子    公益社団法人日本フィランソロピー協会理事長
       【第1部】日本フィランソロピー協会の活動紹介
              農福連携事業
 
       【第2部】パネルディスカッション「誰も取り残さない社会の実現に向けて」
<パネリスト>
  村木 厚子 さん
  井村 良英 さん
<モデレータ>
  野澤 和弘 さん
<パネリスト>
津田塾大学客員教授/元厚生労働事務次官
特定非営利活動法人育て上げネット
<モデレータ>
植草学園大学副学長(教授)/毎日新聞客員編集委員
 
 
パネルディスカッション
パネルディスカッション「誰も取り残さない社会の実現に向けて」
村木 厚子 さん
井村 良英 さん
野澤 和弘 さん
 
野澤 新型コロナウィルス感染症の流行は、私たちにさまざまな影響を及ぼしました。中でも、行動が規制されたことや経済活動が縮小したことにより、困窮する人々の姿が顕在化し、「誰も取り残さない社会の実現」に向けた取り組みへの期待が高まっていると感じます。社会が日常を取り戻していく中で、悩みや困難を抱えた人々を取り残さないためには、どのように寄り添うべきなのか。孤独にならない・させない居場所をどうつくるのか。パネリストのお二人の活動から学び、共に考えます。
若年女性の声なきSOSにも寄り添いたい
村木厚子さん
村木 厚子 さん
村木 若草プロジェクトは、生きづらさを抱えた少女や若い女性を支援する活動で、故・瀬戸内寂聴さんと共に呼びかけ、2016年に立ち上げました。活動の柱は、「つなぐ」「まなぶ」「ひろめる」の3つで、悩みを抱えた少女たちと支援をつなぎ、支援者同士もつながること。そして、彼女たちが置かれている状況や課題を学び、問題の本質を世の中に広く訴えることを目的としています。
 
悩みを抱える若年女性との出会いの〝入り口〟になっているのがLINE相談です。10代後半から20代前半のいわゆる児童福祉の対象から外れた若年女性からの相談が多く、コロナ禍による経済的な困窮のほか、家に居場所がない、家族から逃げる場がないなど家庭の中で起きている問題についての相談が増加しました。内閣府の『コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会』の報告書でも、コロナ対策の特別定額給付金が個人ではなく世帯主に給付されたことにより公的支援が届かなず、外部からは見えにくい家庭の中で困窮している方がたくさんいること、そして女子高校生や主婦の自殺が増加したことなどが表面化しました。
 
こうした人々にどうやって寄り添うのか。支援をする側は、いつでも相談してほしいと思っているのですが、相談する側には、まだまだハードルがあるようです。苦しい、辛いと感じている人々の言葉にできないSOSにしっかり寄り添える仕組みを作りたいと考えています。
若者の「仕方ない」をみんなで減らすことが重要
井村良英さん
井村 良英 さん
井村 認定NPO法人育て上げネットで、ニートやひきこもり、中退や少年院を出院した若者の自立に関わる仕事をしています。学生の頃から約22年間、社会から排除された若者たちの支援に携わってきましたが、彼らの孤立の背景には、本人の頑張りや努力だけでは超えられない壁があると感じています。その壁は、家族環境、ニーズにマッチしなくなった制度、社会の無関心などさまざまですが、それらの壁にぶつかったとき、彼らは逡巡し、「仕方がない」と一 言つぶやき、遠くを眺めます。「誰一人取り残さない社会」の実現を目指すのであれば、こういった壁を若者自らが希望をもって乗り越えていくことができる体制を整え、若者の「仕方がない」というつぶやきではなく、希望へのアクションをいかにみんなで増やしていくことができるかが重要であると感じています。
 
希望へのアクションのためには「わかってくれる人が3人いれば大丈夫」と聞いたことがあります。また、米国の哲学者であるM.サンデル教授は、「異質な人との対話がこれからは重要だ」と言っています。大企業に勤める友人から、「会社では社会の話はしない」と聞いたことがありますが、例えばわれわれや普段あまり接することがない人たちとランチラーン(※)などを始めてみるということもひとつの方策だと思います。
【ランチラーン】普段は接することのない人とオンラインでランチを共にすることをきっかけに、自分の中にある当事者性に気づいたり、社会課題について自分なりに理解を深める学びあいの時間のこと
「つながり・居場所・役割」で孤立させない仕組みを
野澤和弘さん
野澤 和弘 さん
野澤 悩みや困っていることを相談できずにいる少女や若年女性、仕方がないとあきらめる若者たちとどうやってつながるかが課題ですね。
村木 その通りです。相談ができにくい少女たちともつながりを作るため、「まちなか保健室」という居場所を秋葉原に開設しました。保健室といっても、体調や悩みを相談するだけではなく、アロマセラピーを楽しんだり、一緒に何かを作ったり。同じ時間を共有し、他愛のない話で距離を縮めることで、本当に辛くなった時に頼ることができる存在になれると思います。
井村 私たちも若者たちが自ら望んでつながってくれることを大切にしています。そのために必要なのは時間と信頼です。信頼を得るためには、若者たちが複雑な中で生きているということを知ることが大事です。信頼が芽生えると、この人には話してもいいかなという気持ちが出てきます。皆さんの中でも同じような感覚を持っておられる方はいらっしゃるのではないでしょうか。ただ、関係性があることと、孤立していないというのはまた別の問題です。つながっていても、疎外感や孤立感は生まれてしまうことがある。それは関係があっても役割がない場合です。自分たちができることを出し合い、それを生かし合える環境や役割があることが、困難を乗り越えるきっかけになると考えています。
野澤 つながりが必要なのは、若年女性や若者だけではなく、リタイヤ組も同じです。人生100年時代を迎え、この世代も社会から取り残されることがないような支援が必要になってくるでしょう。それを考えると、目を向けなければならないのは、老若男女問わず、みんなが抱えている一つひとつの問題なのかもしれません。つながること、居場所があること、そして役割があること。これが、誰も取り残さない社会の実現ために「できること」のヒントとなりそ うです。
 
・このフォーラムは、第388回定例セミナー として開催しました。
「フィランソロピー始動30周年記念フォーラム2開催報告」おわり