桃の力プロジェクト成果発表会・新商品発表会
ふくしま土壌ネットワーク「桃の力プロジェクト」
成果発表会・新商品発表会
日時:平成28年(2016年)7月5日(火)14:00~
会場:コラッセふくしま(福島市) 5階小研修室
 
 果樹王国ふくしまの再生を目指して活動を続ける「ふくしま土壌ネットワーク」が、「復興応援 キリン絆プロジェクト」の助成を受けて、福島県産桃のブランドイメージの強化と6次化商品の開発などに1年3か月にわたって取り組んできた「桃の力プロジェクト」。その成果報告会と新商品発表会が、平成28年(2016年)7月5日、福島駅前の「コラッセふくしま」で行われた。
 
 東日本大震災に伴う原発事故による風評被害に晒された福島の農業者たち。しかし、福島市の若手果樹生産者たちは希望を失うことなく「ふくしま土壌クラブ」を立ち上げ、圃場の放射線量マップ作成といった活動を開始した。そして平成27年(2015年)2月には、活動の幅をさらに広げようと「ふくしま土壌ネットワーク」を設立。県の代表的な果実である「桃」のブランド力を強めることを目標とした「桃の力プロジェクト」をスタートさせた。
 同プロジェクトの活動の柱は大きく3つあり、市場モニター調査によるニーズの解明、福島を代表する6次化商品の開発、そして絵本の制作によるPRと食育活動などを展開してきた。
 会では、首都圏を中心とした消費者の「福島県産桃」に対するモニター調査の調査結果を発表。6次化商品の開発では、1次産業の加工品プロデュースに実績があるデザイナー・梅原真氏が、商品のネーミングやパッケージデザイン、パンフレットの作成などに参画しており、この日は氏がデザインした桃のギフト箱や、新商品「農家のももジュース」「農家のももトースト」がお披露目された。主力 品種である「あかつき」そのものは収穫にはまだ2週間ほど早く会場には並ばなかったが、桃のおいしさをそのまま閉じこめた加工品に、試食した誰もが顔をほころばせた。また、PR・食育活動の中で制作された絵本『あかつきむらのももばたけ』も、お披露目された。
 桃の力プロジェクトのキャッチコピーである「福島には本当のおいしさがある」という言葉には、生産者たちの丁寧な仕事に裏打ちされたおいしさへの自信と誇り、そして負けない福島の、未来への希望が込められている。
 詩人・高村光太郎が、詩集『智恵子抄』のなかで「ほんとうの空」と謳い上げた福島の空。今も変わらないやさしい陽光と風を浴びて、福島の桃は今夏もおいしく育った。
 同プロジェクトは(2016年)7月で一区切りを迎えたが、福島産果実のブランドイメージ向上と産地の発展を目指した活動はこれからも継続される。
 
《主催者挨拶》
ふくしま土壌ネットワーク 代表 髙橋 賢一 様
 活動を始めてみると農家ならではの欲張りな気持ちが出てきて、加工品づくり、絵本づくり、モニター調査、パンフレット作成などいろいろやってまいりました。でも原点は一つ。自分たちの果物を、もう一度評価してもらいたいということ。皆に喜ばれる果物を作る農家の自信と誇りを取り戻すことでした。
 プロジェクトは(2016年)7月で一区切りとなりますが、これからもできることは継続して、今も残る風評被害を払拭していきたいと考えます。
《来賓挨拶》
福島県北農林事務所 所長 水戸 典明 様
 根強い風評被害や後継者不足、遊休農地の解消など本県の農業を取り巻く環境は厳しさを増しております。そうした中、ふくしま土壌ネットワークの皆様は、福島の果樹栽培者の先頭に立ち、全国に向けて県産果物の安心と安全、そしておいしさのPRに尽力され、福島の農業の復興と発展に多大なご貢献をいただいております。
 本日は、福島県を代表する桃「あかつき」のブランド強化や食育など、1年3か月に渡る活動の成果を楽しみにしてまいりました。「ふくしまプライド。」を合い言葉に、県もまた、農業担い手の育成と確保、情報発信、6次化の推進などに積極的に取り組んでまいります。
福島市 農政部 部長 松谷 治夫 様
 市長からの手紙を預かってまいりましたので代読させていただきます。
 福島県産果物の本当のおいしさを知ってほしいという熱い思いから、放射性物質対策や産地再生に向けて積極的にお取り組みいただいたふくしま土壌ネットワークの皆さまに、心から感謝申し上げます。
 今回のプロジェクトでは、モニター調査による消費者ニーズの解明、高品質な「あかつき」の加工品開発、そして絵本『あかつきむらのももばたけ』作成による食育活動など、各種事業に意欲的に取り組んで来られました。本市もまた、意欲ある生産者や各関係機関と連携し、農業経営の改善や6次産業化への挑戦、魅力創出などに努め、本市農業の振興を図ってまいります。
ふくしま未来農業協同組合 福島地区担当常務 永澤 信弘 様
 本年の果物の生育は順調に推移しております。桃は「はつひめ」「日川白鳳」の出荷が始まり「はつひめ」は前年比で195%となるなど実績が上がっております。「暁星」そして『あかつき』も出そろって まいります。
 JAでは、農業生産力や農業所得のアップ、安心安全で住みよい地域づくりなど8項目を戦略目標に掲げ、しっかりと取り組んでまいります。本日、キリン絆プロジェクトの支援による事業の成果を披露していただけますこと、大いに期待しているところです。
《成果報告》
1. 事業の概要について
ふくしま土壌ネットワーク 副代表 橘内 義知 様
 福島県産果実の本当のおいしさを多くの人に味わっていただきたい。桃のチカラを軸に、もう一度、果樹王国を築いて行きたい。プロジェクトはそこからスタートしました。
 平成24年(2012年)、まず「ふくしま土壌クラブ」を立ち上げ、畑の状態を知ることで果樹農家を続けていく自信を取り戻し、果物をPRする活動を続けてきました。平成27年(2015年)2月には「桃の力プロジェクト」を立ち上げ、「あかつき」の魅力を伝える手段を検討し、モニター調査事業や加工品の開発に取り組み、 また、PRや食育事業で「あかつき」を伝えようという三本の柱を活動目標に掲げました。
 昨夏(2015年)は、首都圏で行われたマルシェに毎週参加して桃の魅力を直接PRし、桃の力プロジェクトの 応援サポーターの募集や、桃の畑がある風景に価値を感じていただこうと消費者ツアーの受け入れも行いました。
 絵本『あかつきむらのももばたけ』の作成では、作者である、はらきょうこ先生と若手農業者、地元の子どもたちが一体となって、農家の思い、福島の風景、子どもの目線を大切にしながら創りあげました。子どもたちに地元の産品に誇りと自信を持ってもらうことこそ、地域ブランドを支える屋台骨となるものです。
2. モニター調査事業 活動成果
ふくしま土壌ネットワーク副代表
うつくしまふくしま未来支援センター特任准教授 小松 知未 様
 プロジェクトで行う加工品開発やPRパンフの作成、長期的な販売戦略の構築のためなどに必要な客観的データを集める調査を行いました。
 昨夏(2015年)「あかつき」が最盛期を迎えた時期には、首都圏で消費者グループインタビューと、キリン本社のご協力を得て104名の会社員アンケートを実施。産地名を伏せたブラインドアンケートで他県産の贈答用クラスの桃と食べ比べていただき、率直な意見を頂戴しました。また味覚センサーによる分析も行い、科学的なバックデータも得ました。
 成果としましては、例えば、桃は国産とひとくくりにされて産地名の認知度は低く、いろいろな品種や風味・食感があるという認識がないという結果が得られました。また会社員アンケートでは約4割の方に「福島県産がおいしい」と評価していただきました。
 結果を踏まえて作成した「あかつき」のPRパンレットは、デザインは農家の素朴さを大切にし、内容に関しましては、おいしく食べるために消費者に知っていただきたいことを吟味して盛り込みました。
 これら調査結果は報告書としてまとめ、農業者や農協・農業関係機関に配布しまして、情報として共有して行きたいと考えます。
3. 加工品開発事業 活動成果
ふくしま土壌ネットワーク 代表 髙橋 賢一 様
 加工品の開発事業では、高知県在住で1次産業の加工品のプロデュースに実績をお持ちのデザイナー・梅原真さんに関わっていただきました。地域にある価値を見い出し、さらに付加価値を付けての加工品開発やプロデュースなどをずっと行ってこられた方です。
 加工品は『あかつき』の中でもさらに品質にこだわり、福島県内の加工業者とも連携。1次加工や試作品の制作を行い、試作品は全国のサポーターの方に発送してアンケートを回収し、改良を進めてまいりました。また、販路開拓についてはイオン主催の商談会にも参加。試験販売などを行いながらさらに完成度を高めてまいります。
 また、こんなにおいしい加工品なら生の「あかつき」も味わってみたいというふうに生食へのアプローチにも繋げていきたいと思います。プロジェクトでの活動はとても重要な経験になりました。今後に活かして行きたいと考えます。
《新商品発表会》
ふくしま土壌ネットワーク 代表 髙橋 賢一 様
 商品開発にご協力いただいた梅原真さんには福島に来ていただいたほか、私たちも梅原さんがプロデュースに関わった高知県の「四万十とおわ道の駅」などを訪ねました。山道を1時間も走ったところにある道の駅でしたが駐車場は満車。わざわざここに来るための価値を生み出しているのだと実感できました。原風景を、環境を守る。昔からの暮らしを守ることは貧しさとは違うという梅原さんの言葉が印象的でした。
 また、商品の監修には、私たちと同様に、「復興応援 キリン絆プロジェクト」の支援を受けている「いわき6次化協議会」の中心メンバーである萩春朋さんというフランス料理店のオーナーシェフの方のお力をいただきました。
 新商品の一つめは「農家のももジュース」。命名とラベルデザインは梅原さんです。贈答用である 特秀の桃だけを使い、しぼったままの100%のプレミアムな桃のジュースです。くどくなくあっさりした味わい。量よりも味にこだわる方へおすすめです。
 二つ目は「農家のももトースト」です。通常のジャムとは少し違い、あまりドロドロしていません。桃のおいしさを濃縮し、「桃ってこういう味」と感じていただけるはず。出盛りの短い「あかつき」ですが保存できることで福島の桃のPRにも通年使えると思います。
《激励の挨拶》
キリンビールマーケティング株式会社 福島支社長 橋本 岩男
 先ほど髙橋代表が「加工品を食べたら生も食べてみたくなる」とお話しされていましたが、試食品をいただいて、今、まさにそんな気持ちです。逆からのアプローチというマーケティングもあるのだなと思いました。
 私は郡山市の出身で、夏は当たり前のように桃を食べていました。恵まれた子ども時代であったことを思い出します。皆様の「地元の誇りを取り戻す」のだという当プロジェクトの活動は、(2016年)7月で一区切りですが、フルーツ王国・福島の誇りを全国に発信する活動をこれからも続けていっていただきたいと思います。販路拡大などにも微力ながら当社も応援させていただきます。ご一緒にこの取り組みを深化させてまいりましょう。
公益社団法人日本フィランソロピー協会 理事長 髙橋 陽子
 一年半前のヒアリングの時に感じた、髙橋代表の力強さを思い出しました。もう一度、福島のおいしさを伝え、自分たちの誇りを取り戻したいという思いが着々と実っているのだなと感じます。心から敬意を表します。
 努力、そしてある意味での戦いはこれからも続いていくのかなと思いますが、確かなデータ、ロジック、そしてふるさとへの思いや愛情が、自信と誇りとなって行くのだと感じていますし、ふるさとの味とぬくもり、誇りと気概が、絵本を通じて子どもたちに伝わっていくものと信じます。福島らしく、お餅と桃を合わせた「もももっち」という商品も提案させていただきます(笑)。
 
《記念撮影》
ふくしま土壌ネットワーク「桃の力プロジェクト」成果報告会・新商品発表会
平成28年(2016年)7月5日 於:コラッセふくしま 5階小研修室
 
 
《インタビュー点描》
キリンビールマーケティング株式会社 福島支社長 橋本 岩男
 今春(2016年)、故郷である福島の支社に赴任することになったことに感謝していますし、誇りにも感じています。福島がもっと元気になれるよう、仕事を通じて貢献して行けたらと考えます。
 私の仕事は営業です。飲食店や量販店とお付き合いさせていただいてる中で、もっと地元の農産品を使いたいという声も伺っておりまして、土壌ネットワークの皆さまと新たなお取引先をジョイントできた例もあります。皆さまは、先の見えない中で懸命に努力され、そして新商品を開発された。そのことに敬意を表したいと思いますし、全国に向けて「福島は元気だぞ」と、一緒に発信していけたらと思っています。
《インタビュー点描》
絵本作家 はらきょうこ 様
 この一年間、橘内さんの農園にもおじゃまして桃の成長過程を見せていただいたり、また多くの方にお話を伺い、ご協力をいただいて、絵本『あかつきむらのももばたけ』は完成しました。作れてよかった作品です。
 色を塗る前から子どもたちに読み聞かせたりしながら反応を確かめたり、農家さんの意見もいただいて、「あかつき」の魅力を伝えることができたかなって思います。絵本は出来上がりましたが、また何度でも福島を訪ねたいですね。
《インタビュー点描》
ふくしま土壌ネットワーク 副代表
うつくしまふくしま未来支援センター特任准教授 小松 知未 様
 「桃の力プロジェクト」が始まったのは、土壌の線量を測ったり、消費者の意識調査やパンフレットを作ったりという、できることはなんでもやって来た活動が一区切りした頃でした。そしてその先にある桃の商品の力や、将来展望を見据えての戦略を練ろうとしていたとき、「復興応援 キリン絆プロジェクト」に出会えたことはとても嬉しかったです。
 メンバーが農家さんですので、農繁期の役員会は夜7時から11過ぎまでになったりして、皆、たいへんだったと思います。でも、こうして成果を発表できて、がんばってきた甲斐があったと、皆で喜んでいるところです。
 こうしてできあがった商品やパンフレットで、昨年(2015年)以上に自信を持ってことし(2016年)の桃のシーズンを迎えることができます。
《インタビュー点描》
ふくしま土壌ネットワーク 副代表 橘内 義知 様
 初めての体験で、期待と不安が入り交じっていた1年3か月でした。こうして成果発表会が開催できて、まずはほっとしています。
 桃の最盛期に子どもたちを招いて開催した昨夏(2015年)のイベントなどは、普通の農家の感覚ではなかなかできないことでしたが、キリンさんのパワーをいただいたからこそできたのかなと感じています。食べていただく方と直接交流でき、おいしさを知ってもらえた。イベントができたこと自体が自信にもなりました。
 思い出せば、苦しかったことはあまり残っていなくて(笑)、絵本づくりでは農家と違う業態の方とお仕事できたことが刺激と励みになりました。一つ作れたことで、もっとアイデアも出てくるはず。それを形にできるよう、これからも努力してまいります。
《インタビュー点描》
ふくしま土壌ネットワーク 代表 髙橋 賢一 様
 プロジェクト発足当時は幅広い活動を計画し、やりきれるかなという不安もありました。でも、多くの方々のご協力や後押しをいただき、無事にやってこられたなというのが、今の正直な気持ちです。
 桃の最盛期はとても短く、畑に集中しなければならない時期にプロジェクトも進められ、その頃がちょっときつかったですね。農家としてこういうプロジェクトに取り組むことも不慣れでたいへんなところでした。でも、振り返ってみれば、それらはもう楽しかったなと思い出されます。
 たくさんの出会いもあり、多くの方のお話を伺うことができました。大きな財産です。梅原さんとの出会いでは、自分たちが知らずにいた価値にも気付かされました。私たちの活動が、全国のがんばる農業者の方々の励みになれたら嬉しいです。
2016.07.05「ふくしま土壌ネットワーク/桃の力プロジェクト成果発表会・新商品発表会」おわり

ページの先頭へ

第2ステージ目次へ
 
お問合せフォームに進む 協会へのアクセスご案内