咲かそうそうま。トルコギキョウ魅力アッププロジェクト事業報告会
「咲かそうそうま。トルコギキョウ魅力アッププロジェクト」
事業報告会
日時:平成29年(2017年)4月27日(木)13:30~14:30
会場:JAふくしま未来 そうま地区本部3階 大会議室
 
 東日本大震災と、それに伴う福島第一原子力発電所の事故により、福島県南相馬市をはじめとする太平洋沿岸地方(浜通り地方)の農業は、作付け中止や風評被害など、大きなダメージを受けた。そんな中、風評被害の少ない花卉栽培を導入することで地域農業の復興を目指そうと、2015年春、JAふくしま未来 そうま地区本部内にトルコギキョウ生産部会が設立され、新たな花の産地づくりを目指した取り組みが続けられてきた。
 南相馬市の西部にある飯舘村は、震災以前からトルコギキョウの産地として知られていたが、震災による避難指示で生産ができなくなってしまった。そのノウハウを、南相馬市で今一度花開かせ、相馬地方で育てられたトルコギキョウを復興のシンボルとして、また、産地としてのブランド育成を目指すことを目標に、部会による「咲かそうそうま。トルコギキョウ魅力アッププロジェクト」をスタートさせた。
 プロジェクトでは、「復興応援 キリン絆プロジェクト」の助成のもと、生産者たちとそれをバックアップするJAが協働し、生産面積の拡大と、安定した量と質の確立を目指し、相馬の大地に、どこにも負けない花を咲かせる努力を続けてきた。
 栽培先進地への視察研修旅行、栽培マニュアルの作成、そして、目指すべきものは何なのかといった課題やテーマを検証しながら、ブランド化のために必要な品質と規格の統一、技術や情報の共有や、PRなどを行ってきた。
 2017年4月27日、JAふくしま未来そうま地区本部で、トルコギキョウ生産部会による「咲かそうそうま。トルコギキョウ魅力アッププロジェクト事業報告会」が開催され、事業の成果や、浮かび上がってきた課題、そしてさらなる目標について報告が行われた。
 大きな成果として報告されたのは、相双地区において、花を育てようという人たちが増えつつある手応えを感じているということだった。トルコギキョウ生産部会の活動が、地域における花卉栽培の生産振興に波及効果をもたらしつつあるのではないかという。
 温暖で、降雪もほとんどない福島県浜通り地方。トルコギキョウをはじめ、さまざまな花色が四季を彩って、日本を代表する花の生産地となる日がやってくるかもしれない。
 トルコギキョウの花言葉は「希望」だ。希望を胸に、そして夢も大きく、南相馬の花卉生産農家による未来づくりへの挑戦はこれからも続いていく。
 
《開会の挨拶》
ふくしま未来農業協同組合 相馬地区本部 指導販売課 菅野 朋宏 様
 ただ今から、復興応援 キリン絆プロジェクト「咲かそうそうま。トルコギキョウ魅力アッププロジェクト」事業報告会を開催したいと思います。
《主催者挨拶》
JAふくしま未来 トルコギキョウ生産部会 部会長 堀 千夏子 様
 私たちの事業はキリン株式会社様をはじめ、多くの方からのご支援とご指導により進めてまいることができました。
 一番の成果は、私たちの意識の変化だったと感じています。栽培のプロとして一から栽培方法を見直し、種まきから順次指導会を開いて活動してまいりました。この事業を契機とし、さらに上を目指し、この地域の特産として成長していけるよう努力してまいりたいと思います。
 最後にもう一度、関わってくださった多くの皆様にお礼を申し上げ、挨拶とさせていただきます。
《主催者挨拶》
JAふくしま未来 そうま地区担当 常務 星 保武 様
 私たちのところには、たくさんの生産部会があり、それぞれの特徴を活かしてがんばっておりますが、震災後の逆境の中で、これだけの成長を見せている部会は、皆さんが一番だと思っております。
 この花は、飯舘村で1億円以上を売り上げた実績があります。皆さんにもそれ以上を目指していただきたく思います。これから生産者も増えていき、生産も増えてまいります。何よりも品質がアップしていると伺い、私たちも喜んでおります。
 相双地区は、天候がいいのに、なぜ園芸が発展しないのか、普及しないのかとよく言われます。私たちは、これから園芸に力を入れて、安定した収入を確保していかなければならないと考えます。
 もちろん皆様のお力もお借りして、希望の花言葉の通り、そうま地区の農業を発展させていかなければならないと感じております。
《来賓挨拶》
キリン株式会社 CSV戦略部 絆づくり推進室 室長 中澤 暢美
 皆さんおそろいのピンクのユニフォーム、本当によくお似合いです(笑)。とても一体感のある部会だと伺っております。
 きょうはたゆまぬ努力を続けてこられた皆さんの活動を聞かせていただけることを、きょうは楽しみにしてまいりました。
 当社では、東日本大震災で大変な被害に遭われた多くの皆様のお役に立てることができればという思いがあります。特に福島、宮城、岩手の皆様に、今まで以上の輝きを取り戻してほしいという思いがあります。
 トルコギキョウ生産部会の皆様はこのプロジェクトをきっかけにキックオフされました。相馬産のトルコギキョウが全国区に名乗りを上げるために、これからが大事な時だと思っています。皆様のますますのご活躍をご祈念申し上げます。
《来賓挨拶》
公益社団法人日本フィランソロピー協会 理事長補佐 落合 敦子
 復興応援 キリン絆プロジェクトの農業支援でご一緒させていただいている多くのプロジェクトの中でもこのプロジェクトはとても印象深いものだと思っています。
 それはなぜかと振り返ってみると、震災の大変な逆境の中でも、そこから希望を持って新しい作物に取り組もうというチャレンジ精神がまず素晴らしいなと思っております。また、皆さんのチームワークのよさも印象的です。お花を育てることに情熱を持って取り組み、活動を支えるJAの皆さんと一体となって楽しそうに取り組んでいらっしゃるところがとても素敵ですし、お花はそういう心や気持ちを繋ぐ力をもっているのだと思います。さらに、女性がとても活躍していて、女性らしい華やかさがあるところがいいなと感じております。
 きょうは事業報告会ですが、ゴールではなく新たなスタートだと思います。これからも希望を持って進んでいかれ、この地域が日本でナンバーワンのトルコギキョウの産地となり、復興のシンボルになれたらと願ってやみません。
《来賓挨拶》
プロジェクトアドバイザー 川崎花卉園芸株式会社 執行役員 相嶋 学 様
 当社の経営理念のひとつに『社会貢献』がありますが、「復興応援 キリン絆プロジェクト」はまさにそうだと思います。花に特化したプロジェクトに携われたということは私にとっても喜びでしたし、花卉業界の一員として、本当に嬉しいプロジェクトでした。
 今の社会情勢を見たとき、高齢化社会がやって来て、これから葬儀が増えてまいります。するとどうなるかと言えば、それだけトルコギキョウの需要が増えます。皆さん、ここは笑うところですよ(笑)。
 大切なことは、安定した供給です。安定した品質と量をマーケットに送り出すことが皆さんの社会貢献です。当てにされたものをきちんと出せること。これから先、この地域が当てにされ、産地として認められ、南相馬には素晴らしいトルコギキョウがあると、ブランドとして認知されていくために、これからが大変です。
 今後のマーケットは、故人の好きだった花を捧げようというふうにカスタマイズされていきます。トルコギキョウは花もかわいいし、色も豊富。きちんと計画し、販売していくことでまだまだ需要が伸びます。1億円を目指すとき、販売する私も責任を持って臨みます。目指した本数、こだわった品質をしっかり守って、マーケットから南相馬のトルコギキョウがほしいと、もっと言ってもらえるように、一人ひとりがチームのエースだと考えて生産に励んでいただけたらと思います。
《事業成果報告 説明》
JAふくしま未来 トルコギキョウ生産部会 副部会長 二谷 純市 様
 いただいたご支援で、ハード面としては、幟(のぼり)やピンクのユニフォーム、ジャンパー、リーフレットなど制作し、また播種機も購入することができました。また、ソフト面としては、先進地に視察も行き、新規就農者が取り組みやすいよう栽培マニュアルも作成することができました。
 これからはさらなるソフト面の充実が大事だと感じています。種まき、芽欠き、定植など、暑い夏場を迎えますがハウスでの作業にがんばっていかなければなりません。
 もっといいものを育て、トルコギキョウなら南相馬と言われるようにブランド化を目指してまいりたいと思っています。
《事業成果報告 説明》
JAふくしま未来 そうま地区本部 指導販売課 事務局 酒井 裕二 様
 これまでの事業の取り組み、課題、これからの目標などについて説明させていただきます。
 ブランド化を目指す事業を進めるにあたり、需要に即した切り花産地の確立、浜通り地方の温暖な気候を利用し、ストックやカンパニュラなどの花も組み合わせた周年栽培によるブランド化、広域的な産地規模の拡大を推進し地域農業全体の復旧と復興を進めるという、3つの目標を掲げました。
 事業の流れは、2015年夏から翌年の秋までの事業の流れを3段階のステップに分け、まず初めに現状を分析して課題を把握して市場のニーズを知り、次に品質の基準やブランドコンセプトを決め、最後に栽培講習会や視察研修、セミナーの開催や情報発信といった各種の取り組みを開始しました。
 具体的な取り組みとしては、市場のニーズを知るために川崎花卉様の東京フラワーポート視察を行い、生産量の確保、販売先の明確化といったアドバイスをいただきました。
 そして栽培先進地である長野県や長崎県へ、品種研修のために視察旅行なども行い、相双地区の環境に適した品種の検討や栽培技術の習得、出荷資材の検討などを行いました。
 部会では生産者の皆様に向けて25回の栽培指導会も実施。種苗会社などによる品種説明会、播種や中間管理などの方法についての指導などを行い、カンパニュラやストックなどの周年栽培に向けた取り組みを進めてまいりました。
 
 また、栽培及び品質基準の検討ということで、出荷企画の見直しを行い、冬越しや大輪については特秀規格を設置し、圃場での芽整理についての基準も明確化させました。
 次に、産地PR活動販売活動として、2016年夏、アドバイザー相嶋様の紹介により、都内のモンソーフルール自由が丘店で、トルコギキョウのPRと販売を実施しました。消費者の感想なども聞くことができ、栽培の励みとしました。
 そして、相双農林事務所の監修のもと、栽培マニュアルを作成。さらには栽培希望者や部会員の勧誘、栽培技術の平準化を目的とした活動、生産資材の支援なども実施いたしました。
 最後に、活動の成果とこれからの目標についてお話しいたします。
 成果としていちばん大きかったことは、現在の自分たちの課題や、どこを目指していけばよいのかといったことが明確になったことです。そのためにはバラツキのある栽培技術を統一し、高位平準化を目指すこと。そしてブランド化を目指すには、栽培面積、本数とも足りません。そして品質のさらなる向上も大事です。安定的な供給体制の確立を目指します。
 部会員は、設立当初19名でしたが、現在は25名となっています。また、相双地区における花卉生産振興に波及効果が現れているのかなと思います。今後、浜通り地方が花の一大産地として知られていくことにも期待しています。
 今後の目標としては、トルコギキョウの一大生産地を目指していくこと。販売高も5,000万円、50万本の早期達成。東京オリンピック・パラリンピックでそうま産のトルコギキョウが使用されることなどを目指しています。
《インタビュー点描》
JAふくしま未来 トルコギキョウ生産部会 部会長 堀 千夏子 様
JAふくしま未来 トルコギキョウ生産部会 副部会長 二谷 純市 様
 同じ花の生産者同士でも、このプロジェクト以前は、あまりお話しする機会なかったのですが、このプロジェクトがあったがゆえに、皆さんで栽培先進地への視察なども行えたし、他の部会の方ともお知り合いになれたということは、とても楽しかったと感じています。また、最近ではお墓に捧げられる花も、トルコギキョウが目立つようになっています。PR効果が現れてきたのかな。
 一大産地を目指すということは一人でできることではありません。皆さんと一緒に、取り組みを進めていきたいと思います。花言葉通りの「希望」ですが(笑)、個人的には平均単価を今よりも20円ぐらい高く、125円に、あるいは150円にしたいと思います。昨夏は暑さに負けて失敗した分もありました。ことしはもう、とにかく、いい花を育てたい。がんばってまいります。
《インタビュー点描》
プロジェクトアドバイザー 川崎花卉園芸株式会社 執行役員 相嶋 学 様
 仕事柄、各地のJAを訪ねる機会も多いのですが、南相馬は、生産者と市場の距離が近いなと感じました。チームワークもいい。それが、この産地の特色かなと思っています。
 部会の皆さんは、浮かんできた課題にも真摯に取り組んでいらっしゃいます。ただ、まだまだ全国には知られていません。一方で、その分伸びしろも秘めています。もっと伸びていくためには計画と実践と反省が必要です。何本作って、何本売れたか。結果がよければ、なぜよかったのか、悪ければなぜ悪かったのかの検証も必要です。数字としての結果にこだわること。
 被災地だった相馬が、がんばっている、明るい希望がある産地なのだということをPRして、出荷量も品質も安定し、ブランドを持っているということを広くアピールしていくことも当然大事です。
 そのためにどうしていくのかを、生産者一人ひとりが考えていくこと。そしてJAさんのご指導で、ますますパワーアップされていくことに期待しています。
《インタビュー点描》
JAふくしま未来 そうま地区本部 指導販売課 当プロジェクト事務局 酒井 裕二 様
 私たちの部会の活動が相双地区全体に刺激を与えたのか、小高地区では小菊、カスミソウなどの生産も始まり、飯舘の帰還区域ではもともとのトルコギキョウそして小菊の栽培など花を育てる方が増えつつあります。当部会にも新地地区の方が新規参入されました。
 目指すところを10とするなら、私たちの活動は、まだ1か2かなと思っています。でも、この始まりのところが大事。生産面積もまだ小さいので、新規参入の方も、ハウスも増やしていきたい。そのためには育てる人たちにもトルコギキョウの魅力を知ってもらわなければなりません。安定的な生産量というのはブランド化にも必要な条件です。質ももちろんですが、でも、どんどん作っていくこと、生産者を増えていくことを願っています。
2017.04.27「咲かそうそうま。トルコギキョウ魅力アッププロジェクト事業報告会」おわり

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